事故は一生付きまとう

https://www.tokyo-np.co.jp/article/201859

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自らの過失で、交通事故の加害者となった受刑者の手記を集めた冊子「あがないの日々」が創刊50年を迎えた。居眠りや飲酒運転など一瞬の油断が惨事につながったことを悔やみ、被害者と向き合う日々がつづられている。発行する東京都交通安全協会は「運転するすべての人の戒めとしたい」と願う。(酒井翔平)

◆「誰もが加害者となる危険性ある」

 1972年創刊。高度経済成長に伴うモータリゼーションで「交通戦争」が、流行語となった時代だ。死亡事故を起こした受刑者から執筆者を選び、年に1度のペースで発行。これまでに500人以上が執筆した。

創刊から50年を迎えた「贖いの日々」。8月に最新刊の57集が発行された

創刊から50年を迎えた「贖いの日々」。8月に最新刊の57集が発行された

 8月23日発行の第57集は、市原刑務所(千葉県市原市)に服役している10〜50代(事故当時)10人の手記を掲載した。

 スマートフォンでゲームを起動しながら運転し、男性をはねて死亡させた男性受刑者は「通い慣れた道だし、少しくらいの脇見なら大丈夫という安易で身勝手な判断からゲームを起動してしまった」と後悔の念をつづった。「出所してから本当の償いが始まる。被害者の未来を奪い、遺族の一生を狂わせた事実を1日たりとも忘れずにまっとうに生きていく」と贖罪しょくざいを決意する。

 冊子は、地域の交通安全協会などに無償配布するほか、官公庁や企業が職員や社員の交通安全教育の教材に活用している。協会によると、加害者の立場で書かれた全国的にも珍しい冊子だという。林二郎・安全対策部長は「車を運転する人であれば、誰もが加害者となる危険性がある。自らの戒めとして、事故防止につなげてほしい」と話す。

◆50代の受刑者「人殺しになってしまった」

 市原刑務所で服役中に手記を執筆した50代の元トラック運転手の男性受刑者が本紙の取材に応じ、「一瞬の油断で被害者や遺族、自身の家族をどん底に落としてしまうことを忘れずにハンドルを握ってほしい。事故を起こしてからでは遅い」と、思いを語った。手記は来年発行の冊子に掲載される予定だ。

冊子に手記を寄せた男性受刑者。「一瞬の油断で他人の人生をどん底に落としてしまうことを忘れずにハンドルを握って」と語る=千葉県市原市で

冊子に手記を寄せた男性受刑者。「一瞬の油断で他人の人生をどん底に落としてしまうことを忘れずにハンドルを握って」と語る=千葉県市原市で

 関東地方のある幹線道路の交差点を左折する際、横断歩道を渡ろうとしていた自転車の高齢女性を巻き込んだ。「人がいないだろうという先入観があった。左折先が目的地で緊張感も緩んでしまった。自分の集中力のなさが事故を招いてしまった」

 自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで現行犯逮捕され、2日後、留置先で警察官から女性が亡くなったと知らされた。「自分は人殺しになってしまった」。罪悪感で押しつぶされそうだった。実刑が確定し、刑に服してからも被害者や遺族のことを忘れたことは片時もないという。

 手記には、人生をかけて償いを続ける覚悟をまとめた。「ここまででいい、と線引きできるものではない。命を奪ったのだから、自分の命が終わるまで償い続けなければいけない」と話した。

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 冊子は、1部50円で一般にも販売している。注文書は都交通安全協会のサイトからダウンロードできる。問い合わせは、同協会=電03(3592)1246=へ。


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